星組「ザ・ジェントル・ライアー」初日感想Part2 キャスト別の役どころなど

宝塚星組

星組公演『ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~』の初日を観劇して、各キャストの役どころや印象についてもまとめてみました。

個人的には主役のアーサー(瀬央ゆりあ)は結構原作と印象が変わっている一方で、ロバート(綺城ひか理)やガートルード(小桜ほのか)は原作を読んだ時に受けた印象とかなり近い人物像でした。

 

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アーサー・ゴーリング卿:瀬央ゆりあ

原作でのアーサーは隙のないプレイボーイという印象が強かったのに対し、初日感想Part1でも書いた通り「ザ・ジェントル・ライアー」でのアーサーは、不器用な面や、トラブルに直面して右往左往している姿など、より人間臭い愛すべき人物像になっていた気がします。

また、原作を読んでいた時は、ローラ(紫りら)との3日間の婚約は、アーサーにとっても火遊びというか過去のちょっとした気の迷い位に捉えていました。

一方、瀬央ゆりあのアーサーは、当時ローラに本気で惚れていて、格差結婚を貫こうとする位の恋だったという設定になっていました。その分、ローラに捨てられた時の傷は深く、そこからなかなか恋や愛に対して正面から向き合えない弱さを持った人物、という印象を受けました。

ロバート・チルターン准男爵:綺城ひか理

綺城ひか理演じるロバートは、私の中では原作の印象そのままの人物でした。真面目で愛妻家で成功を掴んでいる名士という一面と、ローラに脅されて右往左往しアーサーに助けを求める子犬(大型犬)のような一面のギャップが魅力的な人物です。

原作でも十分ロバートにとってアーサーが唯一無二の存在というのは描かれていたんですが、「ザ・ジェントル・ライアー」ではそれが加速というか、ローラに脅されていることをアーサーに聞いて欲し過ぎて「今日は別の用事がある」とあしらわれているにも関わらず「僕も行っていいだろ!」と引き下がってアーサー邸のちょっといかがわしい?パーティーに本当に来てしまったり、アーサーへの感謝のスキンシップが止まらなかったり、大型犬感が増していたロバートでした。

ガートルード・チルターン夫人:小桜ほのか

ロバートの妻、ガートルードも原作の印象にかなり近い人物像でした。もっと「お堅い女」という感じに作ることもできたと思うんですが、「ザ・ジェントル・ライアー」ではロバートだけでなく遊び人のアーサーも心惹かれる魅力的な女性であることも求められるんですよね。

小桜ほのかのガートルードは、貞淑でありつつ華やかで活動的で、真面目なだけではなくお姉さん感というか(ロバートのことを除いては)受け入れる器の大きさみたいなものも感じさせる人物像でした。

アーサー(瀬央ゆりあ)がローラ(紫りら)の次に好きになったのがガートルードというのは、随分好みが違うなとも思ったんですが、2人ともエネルギーに溢れた女性という点では似ているのかもしれません。それを人を欺いたり利用するという負の方向に使っているのがローラで、女性参政権運動など正のエネルギーにしているのがガートルードなのかなと。

欲を言えば、原作にあるガートルードとローラ2人きりでの直接対決も見たかったですね。

ローラ・チーヴリー夫人:音波みのり→紫りら

ローラは原作よりストーリーの中で更に大きな存在になっていたと思います。原作ではローラの出番は全4幕中第3幕で終わりなのですが、「ザ・ジェントル・ライアー」では最後まで登場して、アーサーとローラの「ゲーム」が大きなクライマックスになります。

ローラは間違いなく悪女なんですが、その根底には寂しさだったり自虐的な思いがあるのではないかなと感じさせるような去り方で、私の中ではアーサーとある意味似たもの同士の部分があるのでは、と考察したくなるような人物でした。

音波みのりの休演により、紫りらが代役となりましたが、おそらくかなり短い稽古期間だったにも関わらず、初日から安定感のある快演(怪演)でした。彼女は本当に上手い役者なんですよね。特徴のある声質も、チーヴリー夫人によく合っていたと思います。

メイベル・チルターン:詩ちづる

メイベルは原作では天真爛漫な少女、という印象でしたが、「ザ・ジェントル・ライアー」ではアーサー(瀬央ゆりあ)のキャラクターに不器用さが加わった分、メイベルはしっかり者感が増していたように思います。

これで星組デビューとなる詩ちづるは、想像より大人っぽい声質で、アーサーと年の差はあるけれど子どもっぽくなり過ぎないバランスで良かったです。

トミー・トラファド:稀惺かずと

原作では話題に出るだけで実際には登場しなかったトミーですが、「ザ・ジェントル・ライアー」では大きく取り上げられていました。

原作同様メイベル(詩ちづる)にプロポーズを繰り返している人物で、とにかく前向きで何度振られても全くめげる気配がありません。一応アーサー(瀬央ゆりあ)のライバル?ということで、アーサーと絡む場面もありました。

そしてもうひとつ、今回トミーはロバート(綺城ひか理)の若い頃とリンクする役割も担っていました。トミーはロバートの秘書で、貧しい境遇から今の成功を手にしたロバートを、人生の目標にしています。「どうやってチャンスを掴んだんですか?」とキラキラした目で聞いてくるトミーを前にして、ロバートが過去の自分の過ちを改めて実感する、という対比が上手いなと思いました。

キャヴァシャム卿:美稀千種

アーサーの父、キャヴァシャム卿はもう原作から抜け出てきたような、息子にうるさい老紳士そのものでした。

フィプス:大輝真琴

アーサーの執事、フィプスは原作よりもさらに縦横無尽の大活躍でした。公演プログラムのスチール写真を見た時に「コメディパートはフィプスが持っていくだろうな」と思った通り、キレキレに踊り出してみたり、スキップしてみたりうなだれてみたり、さすがのバイプレーヤーぶりでした。

レディ・マークビー:水乃ゆり

原作では白髪の老婦人だったマークビーですが、やはり「ザ・ジェントル・ライアー」では若い婦人に設定が変わっていました。悪気はないけれどおしゃべりで空気が読めなかったり、ローラ(紫りら)に利用されていることに全く気付いていなかったり、なかなかとぼけた人物像で面白かったです。

また、夫がいる身ながらザ・フランス人のド・ナンジャック子爵(咲城けい)に夢中になり、浮かれまくって舞台を通過していく様子もユーモラスでした。

ド・ナンジャック子爵:咲城けい

原作ではイギリスびいきの駐英フランス大使で、チルターン邸のパーティーに来る客のひとり、という位置づけだったド・ナンジャック子爵ですが、「ザ・ジェントル・ライアー」ではレディ・マークビー(水乃ゆり)の相手役としてフューチャーされています。

恥ずかしげもなく「ジュテーム」を連発するフランス男で、理屈っぽいイギリス紳士たちとは対照的な存在です。咲城けいがこういう個性的な役をするのを初めて見たのですが、思い切りのよい弾けっぷりで伸び伸び演じているように見えました。

アルンハイム男爵:朱紫令真

ロバート(綺城ひか理)が過去に不正に情報を流した相手、アルンハイム男爵はやはり回想シーン1場面での登場でした。ロバートがアーサーに過去を打ち明ける場面で登場していたと思います。

朱紫令真も芝居が上手い人なので、しっかりロバートが教えを請うような手練れの人物に見えました。

メイスン:天路そら→煌えりせ

メイスンはロバート(綺城ひか理)の執事なので、チルターン邸を訪れる人物の名前を告げるのが主な役割になります。煌えりせも代役で急遽だったかと思いますが、聞き取りやすかったです。

ハワード卿夫人:澪乃桜季、マーチモント夫人:紅咲梨乃

元々紫りら演じるバズルドン卿夫人を含め3人で担っていた「アーサーの取り巻き」で「ロンドンのお喋り好きな貴族の夫人」というポジションを、2人で担当しているという感じでした。

おそらく紫りらのパートが代役なしで空くことになって、急遽色々変更もあったと思うのですが、しっかり「うるさいご婦人方」の存在感を出していました。

劇場案内係:颯香凜

主な配役には載っていませんでしたが、アーサー(瀬央ゆりあ)がメイベル(詩ちづる)と待ち合わせをしたロイヤル・オペラハウスの劇場案内係として登場し、アーサーとやり取りするシーンがありました。

颯香凜はこの前の「柳生忍法帖」新人公演で上手い人だなと注目したところだったので、今回もクリアな台詞が聞けて嬉しかったです。

アーサーの従者:鳳真斗愛、紘希柚葉、羽玲有華

個別に役名はついていませんが、アーサー(瀬央ゆりあ)の従者として何度かこの3人がセットで登場します。随所で面白いことをしていたように思うのですが、なかなかそこまで見切れなかったので、次回観劇の際に注目したいと思います!

ジプシーのダンサー:侑蘭粋、鳳花るりな、星影なな、乙華菜乃

アーサー邸の庭で深夜に開かれる少し妖しげなパーティーに登場するダンサーたちで、侑蘭粋を中心に全員少しずつ歌のソロパートがあったと思います。

宝塚歌劇団・瀬央ゆりあの「星組 神奈川芸術劇場「ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~」 (ライブ)」
"英国紳士の嗜み(パレード) "、"英国紳士の嗜み(Rep.) "、"ラストゲーム (ライブ)" とその他を含む、アルバム「星組 神奈川芸術劇場「ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~」 (ライブ)」の曲をプレビュー、購入、ダウンロード。 アルバムを¥1,528で購入。 1曲¥204から。

「ザ・ジェントル・ライアー」は1回の観劇だけでは見切れないところも多々あり、そして回を重ねるごとに面白さが増していく部分もありそうだな、と感じた作品だったので、また随時気づいたことをアップデートしていきたいと思います!

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