星組・礼真琴主演で『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』の上演が発表されました。「赤と黒」といえば、過去に宝塚歌劇で何度も上演されていますが、今回はフレンチ・ロック・ミュージカル版の日本初演になります。
「赤と黒」のフレンチミュージカル版は2016年にパリで初演された新しい作品のため、まだあまり資料が多くありません。早速フランス版の舞台映像を見てみましたので、登場人物や楽曲などをまとめておきます。
- フレンチミュージカル版「赤と黒」の登場人物・配役
- フレンチミュージカル版「赤と黒」の楽曲セットリスト
- 第1幕 ヴェリエール
- 第2幕 パリ
- Quel Ennui マチルド
- Tout Se Perd ヴァルノ, ヴァルノ夫人
- Le Temps passé avec Vous マチルド
- Sans Elles ジュリアン
- Il aurais Suffit ジュリアン、レナール夫人、マチルド
- Pour qu’elle nous Aimes ジェロニモ
- Mi Amor ジェロニモ、フェルヴァック夫人?
- Ces Peines Perdues ラ・モール侯爵
- L’amour nous Désarme ジュリアン
- Je vous Laisse Hélas レナール夫人
- Éviter les Roses キャスト全員(フィナーレ)
- Les Maudits mots D’amour キャスト全員(カーテンコール)
- 宝塚版「赤と黒」月組・星組での歴代キャスト比較
- 星組公演『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』公演情報・期別出演者
フレンチミュージカル版「赤と黒」の登場人物・配役
宝塚版「赤と黒」との配役の違い
「赤と黒」の原作は、フランスの文豪スタンダールの長編小説です。19世紀半ばのフランスが舞台で、主人公ジュリアン・ソレルに、レナール夫人、マチルドという2人の女性が関わっていく主軸は変わりません。
ただ小説に登場する数多くの人物の誰を取り上げて誰を削るか、という比重は、これまでの宝塚版とフレンチミュージカル版では大きく異なります。
そしてフレンチミュージカル版「赤と黒」は、出演者が全部で12人のみです。プリンシパルが9人、アンサンブルが3人です。
もちろん今回星組で上演するにあたって、フランスで上演されているものから出演者数含め色々な変更が生じるとは思いますが、従来の宝塚版で登場していた人物が出てこないケースは多くありそうです。
たとえば、宝塚版「赤と黒」では、ジュリアン・ソレルの友人で材木商のフーケをその公演の2番手男役が演じてきたのですが、フレンチミュージカル版では全く登場しません。また、パリの社交界でジュリアンと絡むクロワズノワ侯爵やフェルバック元帥夫人も、アンサンブルが少し演じるだけとなっています。
フレンチミュージカル版「赤と黒」の登場人物
登場人物の並び順はフレンチミュージカル版のカーテンコール登場順(主要キャストが後に出てくる)の逆です。
Julien Sorel ジュリアン・ソレル
ナポレオンを崇拝し、立身出世を志す、野心家で内向的な青年。
宝塚版でもフレンチミュージカル版でも、第1幕はジュリアンの故郷の町ヴェリエールが、第2幕はパリが舞台となります。
Louise de Rênal ルイーズ・ド・レナール(レナール夫人)
ヴェリエールの町長レナール氏の貞淑な妻。子どもたちの家庭教師としてやって来たジュリアンに心を奪われていく。
レナール夫人が第1幕の、マチルドが第2幕のヒロイン的なポジションですが、フレンチミュージカル版ではジュリアンとマチルドのナンバーにレナール夫人も登場したりするので、第2幕でもレナール夫人の存在感がしっかりある印象です。
Geronimo ジェロニモ
ストーリーテラー。道化役のようなポジションで、物語の中に神出鬼没に登場する。
フレンチミュージカル版最大の特徴が、このジェロニモの存在だと感じました。
ジェロニモはシルクハットに赤い上着という出で立ちで幕開きから登場し、時にはジュリアンの分身のような役割も果たします。
元々「赤と黒」はジュリアンの内面の葛藤や思索に重きが置かれている小説なので、舞台化する際にはどうしても独白や心の声のようなものが多くなりがちです。フレンチミュージカル版では「ジェロニモ」という存在を立て、彼の語りやジュリアンとのやり取りによって、物語を客席に伝えるという手法が取られています。
ちなみに、ジェロニモという人物は、原作の「赤と黒」にもイタリア人のオペラ歌手として登場します。
Mathilde de La Mole マチルド・ド・ラ・モール
パリでジュリアンが働くことになるラ・モール家の令嬢。容姿端麗で自尊心が強い。
他の上流階級の男たちとは異なるジュリアンに興味を示すようになっていく。
Marquis de La Mole ラ・モール侯爵
マチルドの父親。貴族院議員でパリの有力者。ジュリアンを秘書として雇う。
Monsieur Valenod ヴァルノ氏
ヴェリエール貧民収容所の所長。成り上がり者で強欲。過去にはレナール夫人に言い寄っていたこともある。
Madame Valenod ヴァルノ夫人
派手好きで、夫同様金に執着している。
ヴァルノ夫妻はヴェリエールだけでなくパリにも現れ、時にコミカルに物語をかき乱す存在です。レ・ミゼラブルのテナルディエ夫妻に近いポジションかなと思います。
Elisa エリザ
レナール家の召使。
ジュリアンと結婚したがっていたが、レナール夫人とジュリアンの関係を知りショックを受ける。
Monsieur de Rénal レナール氏
レナール夫人の夫。ヴェリエールの町長。
フレンチミュージカル版でのレナール氏は宝塚版よりもコミカルな割合が強い印象です。
アンサンブル 3名
男性アンサンブル1
クロワズノワ侯爵ほか
男性アンサンブル2
司祭、裁判官ほか
女性アンサンブル1
フェルバック夫人ほか
フレンチミュージカル版「赤と黒」の楽曲セットリスト
「赤と黒」ミュージカル曲の一部はスタジオ収録のCDとして発売されていて、音楽配信としても購入することができます。
ただ、このCDでの曲順や歌唱者は、ミュージカル内のものとは異なっているようです。
フランスでのYouTube公式チャンネルでも楽曲のダイジェストなどを見ることができます。
下記がミュージカル内で歌われる順の全曲セットリストになります。
第1幕 ヴェリエール
Écouter son Coeur ジェロニモ
ストーリーテラーのジェロニモが幕開きに観客に向けて歌う曲
時代背景やこの物語のテーマを説明しています
La Sagesse est de tous Les Âges ジュリアン・ソレル
レナール家に家庭教師としてやって来たジュリアンが皆の前で歌う歌
Ding Dong レナール夫人、エリザ
レナール夫人とエリザがそれぞれ自分の胸の内を歌う
Ce Qui Compte Vraiment レナール氏、レナール夫人
レナール夫妻がそれぞれ結婚生活を歌うポップな楽曲
La Gloire à mes Genoux ジュリアン
ジュリアンが自らの野望を独白する歌
Les Maudits mots D’amour ジュリアン、レナール夫人
ジュリアンとレナール夫人の愛と葛藤のデュエット
最後のカーテンコールでも歌われる主題歌的な曲です
Que C’est Bon d’être un Bourgeois ジェロニモ
晩餐会の参加者に扮したジェロニモによる皮肉を込めたブルジョワ賛歌
Je suis Lâche et Alors レナール氏
ジュリアンと妻の関係を知ったレナール氏のソロ
Dans le Noir je vois Rouge ジュリアン
レナール家を追われたジュリアンが心情を吐露する楽曲
第2幕 パリ
Quel Ennui マチルド
マチルドがパリの社交界の退屈さを歌う
Tout Se Perd ヴァルノ, ヴァルノ夫人
パリのラ・モール侯爵家に乗り込んできたヴァルノ夫妻の歌
Le Temps passé avec Vous マチルド
ジュリアンと図書室で二人きりになったマチルドが歌う楽曲
Sans Elles ジュリアン
マチルドの誘いを受けたジュリアンの葛藤と独白の歌
Il aurais Suffit ジュリアン、レナール夫人、マチルド
3人がそれぞれ愛について歌う
Pour qu’elle nous Aimes ジェロニモ
舞台上でジュリアンやマチルドがすれ違っていく中、上流階級の恋愛テクニックについてジェロニモが歌う
Mi Amor ジェロニモ、フェルヴァック夫人?
ジェロニモがマネキンの(というより立て看板的な)女性と歌うオペラ風の曲
Ces Peines Perdues ラ・モール侯爵
マチルドとジュリアンの関係を知った父ラ・モール侯爵が娘を想って歌うソロ
L’amour nous Désarme ジュリアン
牢の中でジュリアンが心情を歌うソロ
Je vous Laisse Hélas レナール夫人
ジュリアンを失ったレナール夫人が歌うソロ
Éviter les Roses キャスト全員(フィナーレ)
ジェロニモを筆頭に登場人物が順番にこの物語のテーマを歌い継いでいく
Les Maudits mots D’amour キャスト全員(カーテンコール)
YouTubeの映像は、公演ではなく別のライブでキャストがパフォーマンスした時のものです。
宝塚版「赤と黒」月組・星組での歴代キャスト比較
宝塚歌劇での「赤と黒」の歴史は古く、1957年に菊田一夫脚本で初演がされているそうです。最近再演されているのは柴田侑宏脚本版で、こちらは1975年初演(1幕物)となっています。その後1989年涼風真世主演での再演時に、2幕物として再構成されました。
1989年月組、2008年星組(安蘭けい主演)、2020年月組(珠城りょう主演)での再演時のキャストを一覧にまとめておきます。
(2023年星組でのキャストも参考までに書いてきますが、これまでの宝塚版とフレンチミュージカル版では役どころや比重などが違います)
ジュリアン・ソレル
(2023年星組 礼真琴)
レナール夫人
1989年月組 朝凪鈴
2008年星組 遠野あすか
2020年月組 美園さくら
(2023年星組 有沙瞳)
マチルド
1989年月組 羽根知里
2008年星組 夢咲ねね
2020年月組 天紫珠李
(2023年星組 詩ちづる)
フーケ
ジュリアンの故郷の友人で材木商。
1989年月組 天海祐希
2008年星組 柚希礼音 *コラゾフ公爵と二役
2020年月組 月城かなと *コラゾフ公爵と二役
2023年星組 (フランス版では出演なし)
ヴェリエール側の主なキャスト
レナール氏
1989年月組 未沙のえる
2008年星組 立樹遥
2020年月組 輝月ゆうま
(2023年星組 紫門ゆりや)
エリザ
1989年月組 麻乃佳世
2008年星組 稀鳥まりや
2020年月組 きよら羽龍
(2023年星組 瑠璃花夏)
シェラン司祭
ヴェリエールの老司祭。若きジュリアンにラテン語を教えた。
1989年月組 真樹ゆたか/波音みちる(1990年再演時)
2008年星組 英真なおき
2020年月組 颯希有翔
2023年星組 (主な配役に名前なし)
ヴァルノ氏
ヴェリエールの町の助役。宝塚版ではレナール氏のライバルという立ち位置で強く描かれています。
1989年月組 大和なつ希/大峯麻友(1990年再演時)
2008年星組 にしき愛
2020年月組 千海華蘭
(2023年星組 ひろ香祐)
デルヴィール夫人
レナール夫人の長年の友人。
1989年月組 並樹かおり/蘭玲花(1990年再演時)
2008年星組 琴まりえ
2020年月組 晴音アキ
2023年星組 (主な配役に名前なし)
ピラール校長
ジュリアンが通うブザンソンの神学校の校長。
1989年月組 幸風イレネ
2008年星組 磯野千尋
2020年月組 夏美よう
2023年星組 (主な配役に名前なし)
パリ側の主なキャスト
ラ・モール侯爵
1989年月組 愛川麻貴
2008年星組 萬あきら
2020年月組 一樹千尋
(2023年星組 英真なおき)
ノルベール伯
ラ・モール侯爵の息子でマチルドの兄。
1989年月組 若央りさ
2008年星組 涼紫央
2020年月組 夢奈瑠音
2023年星組 (フランス版では出番なし)
コラゾフ公爵
ジュリアンに上流階級の恋愛指南をする人物。
1989年月組 久世星佳
2008年星組 柚希礼音 *フーケと二役
2020年月組 月城かなと *フーケと二役
2023年星組 (フランス版では出番なし)
クロワズノワ侯爵
パリの名門貴族で、マチルドの結婚相手候補。
1989年月組 八汐祐季
2008年星組 和涼華
2020年月組 蓮つかさ
2023年星組 (主な配役に名前なし)
フェルバック元帥夫人
マチルドの気を引くためにジュリアンが言い寄ることにした美しい未亡人。
1989年月組 朝吹南
2008年星組 華美ゆうか
2020年月組 結愛かれん
(2023年星組 白妙なつ)
星組公演『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』公演情報・期別出演者
『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』
The Musical≪Le Rouge et le Noir L’Opéra Rock≫
Produced by Sam Smadja -SB Productions
潤色・演出/谷 貴矢
公演期間:
2023年3月21日(火)~3月29日(水)@梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)
2023年4月4日(火)~4月10日(月)@日本青年館ホール(東京)
出演者:
星組
白妙なつ(90期)
礼真琴、ひろ香祐(95期)
暁千星、有沙瞳(98期)
小桜ほのか(99期)
朱紫令真、希沙薫(100期)
碧海さりお、夕陽真輝(101期)
瑠璃花夏(103期)
詩ちづる、鳳花るりな、星影なな、彩夏こいき(105期)
凰陽さや華(106期)
和波煌(107期)
馳琉輝、乙妃優寿、絢咲羽蘭(108期)
専科
英真なおき(68期)
紫門ゆりや(91期)
日本初演となるフレンチミュージカル版「赤と黒」。「1789」や「ロックオペラ モーツァルト」などを手掛けたプロデューサー、アルベール・コーエン氏によるフレンチ・ロック・ミュージカルということで、礼真琴率いる星組メンバーがどのようなステージを作り上げるのか今からとても楽しみです!