星組「ザ・ジェントル・ライアー」配役と各キャストの原作でのキャラクターまとめ

宝塚星組

星組公演『ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~』の配役が発表されました。

ほとんどがオスカー・ワイルドの原作「An ideal husband(理想の夫)」に名前のある人物なので、戯曲に忠実な作りになるのかな?という印象です。

今回発表された「ザ・ジェントル・ライアー」の配役が、原作ではどのようなキャラクターとして描かれているのか、戯曲のト書きなどからまとめてみました。

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「ザ・ジェントル・ライアー」主な配役とキャラクター

オスカーワイルドの原作「理想の夫」の英語版が無料公開されているので、こちらを参照しています。

https://www.gutenberg.org/files/885/885-h/885-h.htm

前半の「」内は、戯曲にある各登場人物のト書きから抜粋したもの、その下が原作を読んでの私の印象です。

アーサー・ゴーリング卿:瀬央ゆりあ

ロバートの親友、子爵

Thirty-four, but always says he is younger. A well-bred, expressionless face. He is clever, but would not like to be thought so. A flawless dandy, he would be annoyed if he were considered romantic. He plays with life, and is on perfectly good terms with the world. He is fond of being misunderstood. It gives him a post of vantage.

「34歳、だが本人はいつも少しサバを読んで若く言う。
育ちの良さを感じさせる顔で、感情を表に出すことはほとんど無い。
頭が切れるが、周りからそう思われることは好まない。
完璧なダンディーだが、ロマンチックな奴だと見なされることは嫌がる。
人生をもてあそんでいて、世間というものとはとても上手くやっている。
人から誤解されることを好む。それが彼のアドバンテージになるからだ」

戯曲でアーサーの登場時のト書きがとても面白かったので、そのまま全文訳してみました。

アーサーは自由気ままな独身貴族で、コミュ力が高くモテるけれど、常に人を煙に巻くような言動をし、自分の本心は表に出さない飄々としたキャラクター。

でも親友であるロバート(綺城ひか理)のためには、何だかんだ奔走する良い奴のようにも見えます。

劇中では、「明日までに結婚しろ!」と迫る父キャヴァシャム卿(美稀千種)や、アーサーのことが大好きなメイベル(ロバートの妹・詩ちづる)などと絡みながら、ロバートの妻・ガートルード(小桜ほのか)や敵役・チーヴリー夫人(音波みのり)と対峙していきます。

ロバート・チルターン准男爵:綺城ひか理

外務次官、下院議員

「40歳だがそれよりは少し若く見える。
キレイに髭を剃った彫りの深い顔立ち、黒髪に黒い目、神経質で疲れた顔つき、
物腰には気品がありプライドの高さも感じさせる。
人気者というタイプではないが、多くの人の尊敬を集めている」

ロバートは堅物で、現在は下院議員・外務次官という役職に就き、更なる出世が見込まれている人物。

原作のタイトルになっている「An Ideal Husband(理想の夫)」はロバートのことで、嘘や浮気が当たり前という貴族社会の中で、妻を一途に愛し、公明正大で真面目と評判の名士です。

しかしロバートには貧しかった若い時に、ある不正をして現在の地位を手に入れたという過去の秘密があり、それをローラ・チーヴリー夫人(音波みのり)に知られ脅されることになります。

ガートルード・チルターン夫人:小桜ほのか

ロバートの妻

「27歳前後、ギリシャ風の美人」

ガートルードはとにかく真面目で、清く正しくあることを非常に重んじている女性。

夫ロバート(綺城ひか理)の高潔さに惚れ込み尊敬していますが、その「理想の夫」像が逆にロバートを追い詰めることになっていきます。

チーヴリー夫人(音波みのり)とは学校の同級生だった(当時は接点が無くお互い殆ど覚えていない位の間柄)ものの、軽薄で非道徳的な振る舞いをするチーヴリー夫人のことをかなり敵視しています。

星組公演「ザ・ジェントル・ライアー」のあらすじでは、アーサー(瀬央ゆりあ)とかつて密かに惹かれ合っていた、という説明がついています。

ローラ・チーヴリー夫人:音波みのり→紫りら

ロバートを脅しにくる悪女

「背が高く痩せ型、青白い顔、薄い唇に赤い口紅、赤毛、
灰色掛かった緑色の目は落ち着きなく動いている、全ての動きがとても優雅、
例えるなら蘭の花のようで、人の好奇心を激しく掻き立てるタイプ」

チーヴリー夫人はガートルード(小桜ほのか)の同級生なので年齢は27歳前後。

この物語の敵役になる悪女です。

使えるものは何でも利用して成りあがってきた女性で、今はウィーン社交界の花形。

複数回結婚歴があり、アーサー(瀬央ゆりあ)と3日間だけ婚約していた過去も。
アーサー曰く「A genius in the daytime and a beauty at night」(昼間は天才で、夜は美女)

ただ色仕掛けで迫るタイプというよりも、結構男性的というか、頭が良く胆の座った悪徳実業家のような印象を受けました。

メイベル・チルターン:詩ちづる

ロバートの妹

「イギリスの典型的な可愛らしさを持つリンゴの花のようなタイプ、
若さゆえの魅力的なわがままさ、無邪気ゆえの驚くべき勇気を持っている」

メイベルの年齢は明記されていませんが、1人だけ若い人物として描かれているので20歳位かなと。

メイベルはロバート(綺城ひか理)の年の離れた妹で、ロバートの親友であるアーサー(瀬央ゆりあ)とも親しい間柄。現在はチルターン家でロバートやガートルード(小桜ほのか)と一緒に暮らしている様子です。

快活で天真爛漫な貴族のお嬢様という感じですが、アーサーとテンポよくウィットに富んだ会話をやり取りする頭の回転の速さも持ち合わせています。

キャヴァシャム卿:美稀千種

アーサーの父親、70歳の老紳士で政治家
浮ついたロンドンの社交界からは距離を取っている

結婚もせずフラフラしている息子(瀬央ゆりあ)が悩みの種で、顔を合わせる度に結婚しろと口うるさく言う

レディ・マークビー:水乃ゆり

チルターン一家の良き友人
チーヴリー夫人(音波みのり)とも友人で、チルターン家の夜会にチーヴリー夫人を連れてくる

レディ・マークビーは原作では白髪の老婦人として描かれているのですが、ジェントルライアーでは若手の水乃ゆりが配役されているので、原作とは設定が変わるのではないかなと。

レディ・マークビーはチーヴリー夫人をチルターン家に連れてくる、物語のきっかけになる人物です。

チーヴリー夫人はロバートを脅迫する敵役ですが、レディ・マークビー自身は気さくで感じの良い人物として描かれていて、おそらくチーヴリー夫人が悪事を働いていることなどは知らない様子です。

フィプス:大輝真琴

アーサーの召使、無表情で完璧に仕事をこなす「理想の執事」

フィップスはアーサー(瀬央ゆりあ)邸でのチーヴリー夫人(音波みのり)との対決の場面でも出番があり、面白くできそうな役です

アルンハイム男爵:朱紫令真

ロバートの過去の不正相手で、チーヴリー夫人の元愛人

今回ジェントルライアーの配役発表を見て、一番おお!と思ったのがアルンハイム男爵です。

アルンハイム男爵はロバート(綺城ひか理)が18年前に不正に情報を流した相手で、戯曲中では既に亡くなっています。アルンハイム男爵最後の愛人がローラ・チーヴリー夫人(音波みのり)だったため、彼女の元にロバートの不正の証拠が渡ってしまったのです。

アルンハイム男爵が登場するということは、ロバートかチーヴリー夫人とのシーンだと思うので、過去を回想する場面などが入るのかなと。

トミー・トラファド:稀惺かずと

ロバートの優秀な秘書、メイベルに毎日プロポーズしている

戯曲中にはトミー・トラファドがメイベルにプロポーズしている場面は直接描かれていないんですが、メイベルが「トミー・トラファドがこんな風に今日もプロポーズしてきた!」と話すシーンがあるので、コメディパートとして膨らませられそうかなと。

メイスン:天路そら→煌えりせ

チルターン家の執事

戯曲では、冒頭のチルターン家の夜会で、来客者の名前を読み上げています。

ド・ナンジャック子爵:咲城けい

駐英フランス大使館員、チルターン家のパーティーに参加している

オリヴィア・バズルドン卿夫人:紫りら

マーガレット・マーチモント夫人:紅咲梨乃

チルターン家のパーティーにやってくる、ロンドンの社交界によくいる噂好きでおしゃべりな婦人たち

ハワード卿夫人:澪乃桜季

ハワード卿夫人は原作に名前が見当たらなかったのですが、おそらく同じくチルターン家のパーティーにやって来るご婦人ではないかなと思います。

その他原作に名前の出てくる役

ハロルド
アーサー(瀬央ゆりあ)の従僕

ジェイムズ
ロバート(綺城ひか理)の従僕

モンフォード
ロバートのもうひとりの秘書

星組公演『ザ・ジェントル・ライアー』公演情報・出演者

ミュージカル・コメディ
『ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~』
原作/オスカー・ワイルド
脚本・演出/田渕 大輔

公演期間:
2022年2月1日(火)~2月13日(日)@宝塚バウホール
2022年2月19日(土)~2月25日(金)@KAAT神奈川芸術劇場

出演者:
美稀千種(79期)
音波みのり、大輝真琴(91期)
紫りら、瀬央ゆりあ(95期)
綺城ひか理(97期)
澪乃桜季(98期)
小桜ほのか、天路そら(99期)
朱紫令真、煌えりせ(100期)
颯香凜(101期)
紅咲梨乃、咲城けい、鳳真斗愛、水乃ゆり(102期)
侑蘭粋、紘希柚葉、羽玲有華(103期)
稀惺かずと、詩ちづる、鳳花るりな、星影なな、彩夏こいき(105期)
乙華菜乃、愛花いと、飛翠真凜、咲園りさ(106期)

*音波みのり、天路そらは全日程休演

ロバートではなくアーサーが主役になるため改変もあり?

オスカー・ワイルドの原作を読む限り、「理想の夫」の主役はロバートとガートルードというチルターン夫妻で、アーサーは「主人公の親友で魅力的な2番手」キャラクターに見えます。

ぱっと思いついたところだと『メランコリック・ジゴロ』のスタンや、『愛するには短すぎる』のアンソニーのような、生真面目な主人公に対しお調子者的な2番手という立ち位置で、でも結局いいヤツ、というような役回りです。

ただ今回の『ザ・ジェントル・ライアー』では、主演の瀬央ゆりあがアーサーを演じるということなので、アーサーを中心にした改変や肉付けがありそうで、その部分も楽しみです。

既に宝塚版のあらすじにはアーサーとガートルードが「かつて密かに惹かれ合っていた」という設定がついています。(原作の戯曲を読む限りでは、そのような背景は無さそうでした)

「理想の夫」は約2日間の短い出来事を描いた戯曲ですが、幕開きチルターン邸のパーティーは19世紀末ヴィクトリア女王時代なので華やかにできそうですし、主な登場人物5人のセリフのやり取りがとてもイギリス的というか、皮肉とウィットがたくさん織り込まれていて楽しいです。

「ザ・ジェントル・ライアー」でも副題に~英国的、紳士と淑女のゲーム~と付いているので、特にアーサー(瀬央ゆりあ)とチーヴリー夫人(音波みのり)のシーンなど、大人のお洒落でウィットに富んだ会話が見られたら嬉しいなと期待しています。