星組公演『ザ・ジェントル・ライアー ~英国的、紳士と淑女のゲーム~』の初日の幕が開きました。
宝塚バウホールでの公演が全日程公演中止となってしまったので、約20日遅れでの初日となりました。
幸運にも初日の公演を観劇することができたので、早速感想や原作との違いなどを覚えている範囲でまとめてみたいと思います。
ネタバレに近いものもありますので、その点ご了承ください!


密室の台詞劇を宝塚らしくショーアップ
原作となるオスカーワイルドの戯曲「An Ideal Husband 理想の夫」は、今これをそのまま上演しても十分面白いと思われる秀逸な物語展開の作品です。
ただ基本的にアーサー(瀬央ゆりあ)とロバート(綺城ひか理)の家の中で全てが完結する密室劇的要素の強い戯曲なので、宝塚の作品として上演するにあたりロンドンの街中に舞台を移してみたり、アーサー邸の庭での異国情緒のあるパーティーなど、ショーアップさせた要素が加わっていました。
とはいえ原作そのままのセリフのやり取りなども随所に組み込まれていて、原作好きとしても楽しめました。
たとえば、原作の第3幕冒頭の、ボタンホールに花を挿すアーサーと執事フィプス(大輝真琴)のやり取りがそのまま「ザ・ジェントル・ライアー」の第1幕の幕開きに使われていました。このやり取りがなかなかアーサーの人物像をよく表していて、面白いんですよね。
また、アーサーとメイベル(詩ちづる)のやり取りも、原作にある台詞がたくさん使われていました!
オロオロする男2人(瀬央ゆりあ・綺城ひか理)としっかりした女3人(紫りら・小桜ほのか・詩ちづる)
原作を読んでいる時には、真面目で堅物のロバートがトラブルに巻き込まれオロオロ右往左往するのに対し、飄々と上手く立ち回るアーサー、という印象があったのですが、「ザ・ジェントル・ライアー」ではアーサーもロバートと同じ位オロオロしていたように思います(笑)
ガートルード(小桜ほのか)にうっかり色々なことを匂わせてしまったり、メイベル(詩ちづる)に対しても全く上手く立ち回れていないアーサーです。
また、原作ではロバートはローラ(音波みのり→紫りら)に完敗なのに対し、アーサーは対等にやり合っているような印象でしたが、宝塚版ではアーサーよりもローラの方が数枚上手な感じがしました。
総じて、オロオロする男2人(瀬央ゆりあ・綺城ひか理)に対し、強くてしっかりした女3人(紫りら、小桜ほのか、詩ちづる)という構図になっていたような気がします。
でもその失敗続きでオロオロするアーサーがチャーミングで、原作とはまた違う魅力的な人物像になっていたのではないでしょうか。
新たに追加されたアーサーとガートルードの関係は?
原作にない要素として、公演のあらすじに「アーサーとガートルードがかつて密かに惹かれ合っていた」という記述があったのですが、これは若干違いました。
実際の舞台では、惹かれ合っていたのではなく、アーサーの昔の片想いとして描かれていました。
アーサーがローラに本気で惚れて捨てられた後、傷心を乗り越えてようやく人を好きになれたのがガートルード。しかしアーサーが想いを告白する前に、ガートルードはロバートと出会い結婚した、という設定になっていました。
もしガートルード側にもアーサーに惹かれていた過去があると、劇中で出てくるガートルードの手紙の持つ意味がややこしくなるので、どうかな?と思っていたのですが、ガートルードはアーサーを本当に古くからの友達としか思っていなかったと描かれていて一安心でした。
そしてアーサーがガートルードを昔好きだった、という告白が思わぬところに飛び火して笑いに繋がったりもしていたので、結果的になかなか良い改変だったのではと思います。
他にも、結末までの流れや、アーサーとローラの対決も原作とは大きく異なっていたのですが、こちらはもう少し物語の構造を頭の中を整理して書きたいと思います!
「ザ・ジェントル・ライアー」各キャストのキャラクターや人物像などは、初日感想Part.2にて!
