宙組「エクスカリバー」と月組「アーサー王伝説」フレンチミュージカル「キングアーサー」の違いや歴代キャスト比較

宝塚宙組

宙組・芹香斗亜主演でミュージカル『Xcalibur エクスカリバー』が上演されます。

エクスカリバーとは、中世イギリスのアーサー王の物語に登場する聖剣で、これまでに世界各地で様々な作品が作られています。

私自身2023年1月にフレンチロックミュージカル版の「キングアーサー」を観たところだったので、今回宙組で上演される「エクスカリバー」の特徴や登場人物、これまで宝塚で上演された作品との比較などをまとめておきたいと思います。

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2023年宙組「Xcalibur エクスカリバー」は韓国発ワイルドホーン版

今回宙組で上演される「エクスカリバー」は、宝塚でもおなじみのブロードウェイのクリエイター、アイヴァン・メンチェル脚本、フランク・ワイルドホーン作曲で2019年韓国で初演されたミュージカルです。

2022年に雪組で上演された『BONNIE & CLYDE』もアイヴァン・メンチェル脚本、フランク・ワイルドホーン作曲の作品でした。

楽曲だけを聴き比べてみても、フレンチロックの「アーサー王伝説」「キングアーサー」に対して、ブロードウェイサウンドの「エクスカリバー」という感じでおもしろいです。

韓国版「エクスカリバー」を見ると、アーサー、グィネヴィア、ランスロット、マーリン、モーガンの5役がメインキャラクターという印象です。

ちなみに韓国版でのカーテンコールは、グィネヴィア→マーリン→モーガン→ランスロット→アーサーという登場順でした。

各登場人物の役どころもフレンチミュージカル版とは色々と変わっていて、アーサーとランスロットが幼馴染だったり、グィネヴィアがお姫様ではなく戦う女性だったりします。

個人的に、アーサー、ランスロット、グィネヴィアの三角関係の描かれ方は、今回のワイルドホーン版が一番それぞれの人物の感情を理解しやすいかなと感じました。

宙組「エクスカリバー」予習用音源 ドイツ語圏版Artus Excalibur

ワイルドホーン版「エクスカリバー」は2019年韓国初演となっていますが、実際には2014年にその前身となる作品”Artus Excalibur”がスイスをはじめドイツ語圏で上演されています。

そのドイツ語版の音源(抜粋版)が聴けるようなので載せておきます。

ここから韓国版の「エクスカリバー」になる際にどの程度の追加や変更があったのか検証できていませんが、全体の雰囲気は変わっていない気がするので、イメージを掴むには良いかなと思います。

  1. Das Feld der Ehre / The Field of Honor – アンサンブル
  2. Der Heiler / The Healer – マーリン
  3. Schwert und Stein / Sword and Stone – アーサー
  4. Sünden der Väter / Sins of the Fathers – モーガン
  5. Ein wahrer Held / A True Hero – アーサー、グィネヴィア
  6. Die ruhmreiche Schlacht / The Glorious Battle – アーサー、ランスロット、マーリン
  7. Ein neuer Tag / A New Day – グィネヴィア
  8. Heute Nacht fängt es an / It Begins Tonight – アーサー、ランスロット、マーリン
  9. Begehren / Desire – マーリン、モーガン
  10. Morgen triffst du den Tod / Tomorrow, You Meet Death – アーサー、モーガン、グィネヴィア他
  11. Wo ging die Liebe hin / How Do You Make Love Stay? – グィネヴィア
  12. Nur sie allein / Her Alone – ランスロット
  13. Was macht einen König aus / What Makes A King? – アーサー
  14. Vor langer Zeit / Long Ago – アーサー、グィネヴィア

月組「アーサー王伝説」ホリプロ「キングアーサー」はフレンチミュージカル版

直近でアーサー王とエクスカリバーの物語を扱ったミュージカル作品として、2016年月組で上演された「アーサー王伝説」(珠城りょう主演)と、2023年ホリプロ主催で上演された「キングアーサー」(浦井健治主演)があります。

この2作品はどちらもドーヴ・アチア作のフレンチロックミュージカル版で、宙組で上演される「エクスカリバー」とは、全く楽曲が異なります。

2016年宝塚月組公演「アーサー王伝説」公演概要

ミュージカル「アーサー王伝説」

2016年10月14日(金) ~10月19日(水)@文京シビックホール
2016年10月28日(金) ~11月9日(水)@梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

潤色・演出:石田昌也

主な配役
アーサー:珠城りょう
グィネヴィア:愛希れいか
モーガン:美弥るりか
ランスロット:朝美絢
マーリン:千海華蘭
メリアグランス:輝月ゆうま ほか

 

2023年ホリプロ主催「キングアーサー」公演概要

ミュージカル「キングアーサー」

2023年1月12日(木)~2月5日(日) 東京・新国立劇場 中劇場
2023年2月11日(土)~2月12日(日) 群馬・高崎芸術劇場
2023年2月24日(金)~2月26日(日) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
2023年3月4日(土)~3月5日(日) 愛知・刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール

演出:オ・ルピナ

主な配役
アーサー:浦井健治
メレアガン:伊礼彼方/加藤和樹 (Wキャスト)
ランスロット:太田基裕/平間壮一 (Wキャスト)
グィネヴィア:小南満佑子/宮澤佐江 (Wキャスト)
マーリン:石川禅
モルガン:安蘭けい ほか

ホリプロの特設サイトが既に見れなくなっているようなので、観劇した時のキャストボードの画像を。

衣装や舞台装置も黒を基調にしたダークな世界観でした。

アーサー王やエクスカリバーに関連した宝塚作品

1998年宙組創設1作目の「エクスカリバー」は全く別作品

実は1998年に宙組が創設された際、第1作目の大劇場公演のタイトルも「エクスカリバー」でした。(小池修一郎作・演出、姿月あさと、花總まり主演)

登場人物にマーリンやモーガンがいたりするので少しややこしいのですが、これは2023年宙組のワイルドホーン版ミュージカル「エクスカリバー」とは全く別作品です。

1998年の宙組作品「エクスカリバー~美しき騎士たち~」は、アーサー王の死から数世紀後を舞台に、聖剣エクスカリバーが再び現れたことによる物語を描いたファンタジーです。

2011年には星組・真風涼帆主演で「ランスロット」も上演


ちなみに宝塚でのアーサー王伝説に関連する作品として、2011年星組で『ランスロット』(真風涼帆主演)が上演されています。

これはランスロット側を主役にした作品ですが、今回宙組「エクスカリバー」の主演を務める芹香斗亜も出演していて、モルドレッド役を演じています。

宙組「エクスカリバー」の主な登場人物と歴代配役比較

アーサー:芹香斗亜

2016年月組「アーサー王伝説」:珠城りょう

2023年ホリプロ「キングアーサー」:浦井健治

2023年宙組「エクスカリバー」:芹香斗亜
 

2011年星組「ランスロット」:天寿光希

 

先王ウーサー・ペンドラゴン(雪輝れんや)の息子。

自分の血筋を知らず、エクター(松風輝)の息子として平凡に育つが、聖剣エクスカリバーを岩から引き抜いて新たな王となる。

 

アーサーはどの作品でも素直で少し頼りない若者というキャラクターですが、韓国ワイルドホーン版の映像を見ると「怒りの感情を制御できない」という特徴が大きく描かれています。

今回の「エクスカリバー」では、アーサーのその欠点が、盟友ランスロット(桜木みなと)をはじめとする登場人物たちとの関係性に影響していきます。

グィネヴィア:春乃さくら

2016年月組「アーサー王伝説」:愛希れいか

2023年ホリプロ「キングアーサー」:小南満佑子/宮澤佐江(Wキャスト)

2023年宙組「エクスカリバー」:春乃さくら

 

2011年星組「ランスロット」:早乙女わかば

 

アーサー(芹香斗亜)の妻、王妃となる女性。

グィネヴィアのキャラクターや描かれ方は作品によって大きく異なります。

フレンチミュージカル版でのグィネヴィアは、アーサーに助けられる隣国の姫として登場しますが、今回の「エクスカリバー」では自ら弓を持って戦うような自立した女性として描かれています。

ランスロット:桜木みなと

2016年月組「アーサー王伝説」:朝美絢

2023年ホリプロ「キングアーサー」:太田基裕/平間壮一(Wキャスト)

2023年宙組「エクスカリバー」:桜木みなと

 

2011年星組「ランスロット」:真風涼帆

円卓の騎士。アーサー(芹香斗亜)に仕える一方、アーサーの妻となったグィネヴィア(春乃さくら)に思いを寄せる。

ランスロットの描かれ方もフレンチミュージカル版とワイルドホーン版では大きく異なります。

フレンチミュージカル版では、ランスロットはアーサーが王になった後に登場し、臣下となりますが、ワイルドホーン版ではアーサーの幼馴染として最初から登場します。

「エクスカリバー」でのランスロットは、アーサーが王の息子だとわかる前からの親友で、ランスロットの方が兄貴分として描かれています。

マーリン:若翔りつ

2016年月組「アーサー王伝説」:千海華蘭

2023年ホリプロ「キングアーサー」:石川禅

2023年宙組「エクスカリバー」:若翔りつ

 

2011年星組「ランスロット」:如月蓮

魔術師で預言者。先王ウーサー・ペンドラゴン(雪輝れんや)の死後、アーサー(芹香斗亜)の前に現れ、新王アーサーを導いていく。

フレンチミュージカル版でのマーリンは、物語を俯瞰する立ち位置という印象がありましたが、今回のワイルドホーン版では、モーガンとの関わりも含め、より積極的に物語を動かしていくような印象です。

ビジュアルも、フレンチミュージカル版のお二人は魔法使いのおじいさん、というような作り方でしたが、韓国版はメイクなどで異界感は出しつつも男らしいビジュアルでした。

モーガン:真白悠希

2016年月組「アーサー王伝説」:美弥るりか

2023年ホリプロ「キングアーサー」:安蘭けい

2023年宙組「エクスカリバー」:真白悠希

アーサー(芹香斗亜)の姉。

虐げられて育ち、王の地位を得たアーサーを恨んでいる。マーリン(若翔りつ)の元弟子でもあり、魔術を操る。

 

モーガンの設定もフレンチミュージカル版と今回のワイルドホーン版で色々と異なります。

まず、フレンチミュージカル版でのモーガンはアーサーの異父姉でしたが、ワイルドホーン版では異母姉で、モーガンも先王ウーサー・ペンドラゴン(雪輝れんや)の血を引く存在です。

ワイルドホーン版「エクスカリバー」では、モーガンはアーサー達の敵であるサクソン族のウルフスタン(悠真倫)と行動を共にしています。また、元師匠であるマーリンへの愛憎入り混じった思いが強く描かれています。

エクター:松風輝

アーサー(芹香斗亜)の育ての父。

韓国版エクスカリバーでは、アーサーの怒りを抑えられる唯一の存在として描かれています。

(宙組版には無かった場面ですが、韓国版では第1幕の最初の方で、仲間たちとのちょっとした諍いでアーサーの怒りが暴走して誰にも止められなくなり、父エクターが自分の目を見るように言ってようやくアーサーが鎮まる、というシーンがありました)

ケイ:真名瀬みら

2016年月組 佳城葵
2023年ホリプロ 東山光明
2023年宙組 真名瀬みら

ケイはアーサー王の物語においてエクター(松風輝)の息子で、アーサー(芹香斗亜)と一緒に育った義理の兄です。

ただし宙組版「エクスカリバー」ではその描写は省かれていて、単に円卓の騎士の1人として登場していました。(ワイルドホーン版ではランスロットをアーサーの兄貴分として濃く描いているので、バランスを取るためかなと思います)

ウルフスタン:悠真倫

サクソン族を率いる族長。アーサー(芹香斗亜)たちが国を挙げて戦う宿敵。

アスガル:大路りせ(二役)

ウルフスタン(悠真倫)の息子。アーサーたちと戦う。

宙組版を見るまで確定ではありませんが、韓国版「エクスカリバー」の映像を見ると、アスガルという役名はウルフスタンの息子として登場していました。

サクソン兵長:輝ゆう

ウルフスタン(悠真倫)の部下。

ウーサー・ペンドラゴン:雪輝れんや

先代の王でアーサーの実父。『エクスカリバー』の物語が始まる時点では既に亡くなっているので、回想や語りの中での登場かなと想像します。

円卓の騎士たち

パーシヴァル:琉稀みうさ

ボールス:梓唯央

トリスタン:泉堂成

ガラハード:大路りせ(二役)

ブルーノ:聖叶亜

ルーカン:波輝瑛斗

アーサーに仕える騎士たち。

ワイルドホーン版「エクスカリバー」では、ランスロット同様、王になる前のアーサーの幼馴染から円卓の騎士になったと描かれているメンバーも多くいます。

ガウェインは登場せず?

フレンチミュージカル版「キングアーサー」では、ガウェインが円卓の騎士のリーダー格で、アーサーの忠実な右腕として描かれていました。

韓国のワイルドホーン版でも、ガウェインの役名は円卓の騎士の1人として登場しているのですが、宙組版の主な配役には無いようです。

2016年月組 紫門ゆりや
2023年ホリプロ 小林亮太

宙組「エクスカリバー」での役どころが不明な主な配役

ビビアン:花菱りず

ビビアンはアーサー王伝説の中で湖の妖精として登場する存在ですが、今回の「エクスカリバー」の中でどのような役どころなのかはまだわかりません。

アイラ:湖々さくら

アヴァ:花宮沙羅

エルシー:夢風咲也花

男役の主な配役は役名から円卓の騎士ということはわかるのですが、娘役は役名だけではどのような役どころかわかりません。

韓国版の映像だと、グィネヴィアが村の娘たちと一緒に戦いの訓練をするシーンがあるので、そこで登場する仲間たちかな?と想像します。

敵役メリアグランス/メレアガンは登場せず

フレンチミュージカル版では、聖剣エクスカリバーをアーサーに横取りされたと恨みを抱く敵役としてメリアグランスが大きく描かれています。

メリアグランスはモーガンと手を組んでアーサーに復讐を企み、ストーリーを動かしていきますが、ワイルドホーン版「エクスカリバー」では登場しないようです。

2016年月組 輝月ゆうま
2023年ホリプロ 伊礼彼方/加藤和樹 (Wキャスト)

宙組公演『Xcalibur エクスカリバー』公演情報・期別出演者

ミュージカル
『Xcalibur エクスカリバー』

脚本 アイヴァン・メンチェル
作曲 フランク・ワイルドホーン
作詞 ロビン・ラーナー
潤色・演出 稲葉太地

公演期間:
2023年7月23日(日) – 8月5日(土)@ 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)[東京都]

出演者:

宙組
松風輝(92期)
芹香斗亜(93期)
桜木みなと(95期)
花菱りず(97期)
若翔りつ(99期)
湖々さくら、真名瀬みら、雪輝れんや(101期)
花宮沙羅、春乃さくら、夢風咲也花、輝ゆう(102期)
有愛きい、琉稀みうさ(103期)
真白悠希、梓唯央、楓姫るる、舞こころ(104期)
泉堂成、大路りせ、聖叶亜(105期)
葉咲うらら、渚ゆり、郁いりや、波輝瑛斗、花咲美玖(106期)
風翔夕、結沙かのん、華乃みゆ、織史青(107期)
愛城美紗、華楽逸聖、海玖里粋、輝珠ななせ(108期)
輝星成、響望歌(109期)

専科
悠真倫(81期)