「ベルサイユのばら」韓国ミュージカル版の観劇レポと感想

ミュージカル

2024年7月から韓国で新たなミュージカルとして上演されている「ベルサイユのばら」。なんとなく存在は知っている位だったのですが、韓国旅行中に思いつきで観にいってみました。

予備知識ほぼ無し、韓国語の台詞は全くわからない状態で観劇しましたが、宝塚の「ベルばら」とは全く別物の、グランドミュージカル的世界観で、これはこれでとても楽しめました。

あくまでも「宝塚で『ベルサイユのばら』の色々なバージョンは観ている」「原作の漫画は一通り読んだことがあるものの、かなり前なので記憶は曖昧」というイチ人間の視点になりますが、韓国版ベルばらの観劇レポと感想をとりとめなく綴ってみたいと思います。

(韓国語の台詞が全くわかっていないので、ストーリーの理解が間違っているところもあるかもしれません。ご了承ください)

ストーリーについてネタバレ全開ですので、そのつもりでお読みください!
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韓国ミュージカル版「ベルサイユのばら」のあらすじ、特徴と感想

韓国ミュージカル版「ベルサイユのばら」でメインとなる3役、オスカル、アンドレ、ベルナールはそれぞれトリプルキャストで、私が観に行った時のキャストは

オスカル:キム・ジウさん(『ムーランルージュ』サティーン役、『シカゴ』ロキシーハート役など)

アンドレ:コ・ウンソンさん(『ウエストサイドストーリー』トニー役、『フランケンシュタイン』アンリ/怪物役など)

ベルナール:ノユンさん

でした。韓国ミュージカルを観るのは初めてだったので、キャストの方は皆さん存じ上げなかったのですが、過去に演じた役を見ると、この「ベルサイユのばら」が韓国ミュージカル界のメインどころを揃えた作品ということがわかるなと思いました。

宝塚版とは異なる主な登場人物

韓国ミュージカル版「ベルサイユのばら」の主な登場人物は、オスカル、アンドレ、ベルナール、ロザリー、ポリニャック夫人です。

この名前の並びで「あ~漫画のあの辺りの話かな」と見当がつく方は、たぶんすんなり韓国版のストーリーも追えると思います。私はロザリーの生い立ちやポリニャック夫人周りのことはほとんど記憶から消えていたので、幕間に検索して補完しました。

韓国版「ベルサイユのばら」はオスカルが主役なので、ざっくりした流れとしてはオスカルが女性ながら男性として育てられることになったところから始まり、軍人として生きる中で貴族社会の腐敗に気づかされ、フランス革命勃発時に民衆側について「バスティーユに白旗が!」で幕、という感じになります。

民衆側の代表がベルナール、貴族側の代表がポリニャック夫人という描かれ方になっていて、元々は貴族側にいたオスカルが、最終的にはベルナールと組んで民衆サイドに行くという構図になります。

ラストシーンが個人的に印象的で、撃たれて息絶えたオスカルをベルナールが抱き上げてロザリーと共に舞台奥へ歩き出し、既に亡くなっているアンドレが途中からそれに加わって4人の後ろ姿で幕が下りるという感じだったと思います。宝塚版のベルサイユのばらとはまた違った幕切れだなと。

劇中の出来事としては、ベルナールの黒い騎士のエピソードがメインで、物語を動かしているのはほぼベルナールなのでは?と思う位の分量でした。それに加えてロザリーの生い立ち&実母ポリニャック夫人との対峙が描かれていて、逆にそれ以外の登場人物やエピソードは最小限の描かれ方になります。

オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ

宝塚では男役が演じるオスカルですが、韓国ミュージカルでは当然ながら女性が演じています。キム・ジウさんも168㎝ある長身の方なので、白い軍服も似合っていて身のこなしもスマートでした。韓国版ベルばらでは、オスカルのドレス姿も出てきます。

韓国版ではオスカルがフェルゼンに片想いする描写が無いので(もしかしたら台詞では言っているのかもしれませんが)、宝塚版より更に凛々しい印象で、全編通して貴族に生まれ王室を守る近衛隊という自分の使命と、民衆が苦しんでいる現実との間で葛藤しているオスカルでした。

あとはやたらと喧嘩しているオスカルで(笑)宮殿でも酒場でも衛兵隊でも喧嘩の場面があり、しかも剣ではなく基本素手でボコボコにするという喧嘩上等のオスカルでした。

アンドレ・グランディエ

韓国版ベルばらは宝塚版とは全く雰囲気が違い、基本的にシリアスで(例えが適切かわかりませんが)レ・ミゼラブルのようなトーンの場面が多いのですが、その中で「ベルばら」の少女漫画的な要素を一手に引き受けていたのがアンドレという印象でした。

酒場の帰り、酔って寝てしまったオスカルを、ソロ曲の間奏中に「お姫様抱っこ」し、そのまま歌い続けるアンドレ、という宝塚では見られない構図も見れてテンションが上がりました。

宝塚版のアンドレは軍服を着ているシーンも多いですが、韓国版のアンドレは基本平服なので、より貴族ではないという立場が際立つなと。(キャストボードなどでのアンドレは軍服姿ですが、劇中で着ていた印象が無く…服装も髪型もベルナールと似ているので、一瞬どっち?となる時がありました)

アンドレが「黒い騎士」に成りすますシーンや、眼を怪我するシーン、毒入りワインのシーン(オスカルに飲ませようとまではしていなかった気がする)などはあるのですが、宝塚版では必ずあるオスカルとアンドレが結ばれる「今宵一夜」にあたるシーンはありませんでした。なので(多分台詞では説明していると思うのですが)台詞がわからないと、アンドレは片想いのまま亡くなったようにも見えて、より切なかったです。

ベルナール・シャトレ

今回ミュージカルの役として一番美味しいというかカッコいいのはベルナールだと思います。

2幕途中までベルナールは「黒い騎士」としてオスカル達と対立する存在として描かれながら、最後にはオスカルと共闘し最期を看取る存在なので、ストーリーの中でもドラマチックな役どころです。貴族と対になる民衆側の代表として、民衆を率いて歌う大ナンバーもたくさんありました。

宝塚版では描かれることのないベルナールの生い立ち(母親が自分を道連れに入水自殺し自分だけが助かった)が表現されているので、人物像に深みが増して、彼が社会を変えようと立ち上がる動機みたいなものも見えやすかったかなと。とにかく良い役でした!

ロザリー・ラ・モリエール

宝塚版ベルばらでのロザリーは、ジャルジェ家に身を寄せるようになった後の描写がメインなので、オスカルに想いを寄せる妹的存在として可愛らしく描かれることが多いんですが、韓国版ではその前の彼女の厳しい生い立ちの方がより強く描かれていました。

生活に困窮し病気の養母の為に身売りしようとしたり、その養母が実母であるポリニャック夫人の馬車でひき殺されてしまったり。この時ベルナールに助けてもらうというエピソードも描かれているので、ジャルジェ家で黒い騎士として捕らえられたベルナールと再会して、後に結婚するという展開も説得力がありました。

ジャルジェ家に来た後、オスカルに恋をしてオスカルの洋服を手に歌い踊ったり、という宝塚版のロザリーに近い場面もあるのですが、個人的にはパリの下町で虐げられた環境でも生き抜こうと歌う姿や、後にヴェルサイユ宮殿でポリニャック夫人と対峙した時の強い姿が印象に残るロザリーでした。

ポリニャック夫人

韓国版ベルサイユのばらにはマリー・アントワネットがいないので、ポリニャック夫人が貴族の代表として民衆側との対比を見せる存在になります。贅沢好きで自分の私利私欲だけに動いている貴族たちの堕落振りを存分に示す華やかで毒々しい存在感は、まさに悪の華でした。

ポリニャック夫人は1幕2幕それぞれでソロの大きなナンバーがあるのですが、1幕では権力を欲しいままにしている女帝の自己紹介ソングなのに対し、2幕で娘シャルロットを失って歌うナンバーは、貴族社会の中で狡くしか生きられなかった一人の女性としての悲哀がにじんでいて、ただの悪役というだけではなく奥行きのある人物像でした。

いわゆるヴィラン的な立ち位置なので、カーテンコールでも人気が高く、ポリニャック夫人が登場したらひときわ歓声が大きくなっていました。劇中で幼いシャルロットを厳しく呼びつけるシーンが何度かあるんですが、カーテンコールでもそれをやってシャルロットを呼び込んだ後、ハグをするという演出も良かったです。

マリー・アントワネットやフェルゼンはカメオ的な描かれ方

宝塚版のベルサイユのばらではメインで描かれるマリー・アントワネットとフェルゼンですが、韓国版では主要な役としては登場しません。

正確に言うと舞台上に登場はするのですが、アンサンブルの人が演じていて、台詞は一言も無かったと思います。

アントワネット(と思われる人物)は複数の場面に登場するものの、一切喋らないので、余計に宮廷やポリニャック夫人に操られている感というかお人形感が際立って、面白い演出だなと思いました。

ルイ16世やフェルゼンも、「宮廷の場面で一番高い位置にいる人が、ルイ16世とアントワネットなんだろうな」「ここでアントワネットの隣にいるのは多分フェルゼンということなのかな」というように、背景を知っている人にはその人物に見えるけれども劇中では特にフューチャーされない、という扱いです。

その他プリンシパルはジェローデル、オスカル父、乳母、ド・ゲメネ、シャルロット

ジェローデルもプリンシパルとして登場し、オスカルに求婚するくだりがあります(韓国語の台詞がわかっていないので想像ですが)

ジェローデルのビジュアルがキャストボードなどにある画像と結構違っていて、ロングのストレートの髪型の人がジェローデルね、と思って見ていたのですが、実際はそんなに長髪ではなかったのでジェローデルだと気づくまでに時間が掛かりました。

オスカルの乳母でアンドレの祖母は、宝塚版だとマロン・グラッセとして少しコミカルに描かれることも多いですが、韓国版ではオスカルの行く末を憂うどちらかというとシリアスな存在でした。乳母がメインで歌い上げるナンバーもあって、迫力がありました。

ド・ゲメネはポリニャック夫人と共に登場する横暴な貴族です。

シャルロットはポリニャック夫人の11歳の娘(ロザリーの異父妹)で、ド・ゲメネと結婚させられそうになって投身自殺をしてしまうという役どころです。

シャルロット役を演じたナム・ソウンさん(画像右下)がこの世のものとは思えない位美少女でした。調べていたら「モーツァルト!」でアマデ役を演じていたこともあるんですね。

他には、オスカルが衛兵隊に転属する流れで少しアランも登場するのですが、オスカルが一瞬で衛兵隊をボコボコにして従わせるので(笑)、アランの人物像や背景などは描かれていませんでした。

結論:宝塚のベルばらとは全く別物として見応えのあるミュージカル!

というわけで取り留めなく思いついたことを色々書きましたが、韓国ミュージカル版「ベルサイユのばら」、とても面白かったです。

リアルなベルばら、とでも言いますか、少女漫画としてのベルばらや宝塚のベルばらとは全く違う世界観で、華やかな場面よりも苦しんでいる民衆側の場面の方が多いんですが、フランス革命を描いた歴史ミュージカルとして純粋に見応えがありました。

楽曲も壮大なスケールのものが多く、そして韓国のミュージカルスターの皆さん本当に歌声が力強くて迫力満点でした。

宝塚にとって「ベルサイユのばら」はとても重要な作品で、受け継いでいくべきものだと思うのですが、ある意味宝塚歌舞伎というか「型」が決まってしまっている題材なのも事実です。宝塚版でピックアップされる登場人物や、描かれ方は基本的には常に同じなので、ジェローデルやロザリー、ポリニャック夫人が奥行きを持って描かれる今回の韓国版ミュージカルはとても新鮮で楽しかったです。

いつかこの韓国EMK版ベルばらを日本でもやることがあるならば、宝塚以外で男女キャストで上演されるのかなとは思うのですが、全く違うもうひとつの「ベルばら」として、宝塚の別箱公演でやるのも見てみたいなとも妄想してしまいました。

韓国ミュージカル版「ベルサイユのばら」劇場レポ

「ベルサイユのばら」はソウル市内の忠武アートセンターで上演されています。地下鉄の駅からも近いので、アクセスしやすい劇場でした。

建物内には複数の劇場や施設が入っていて、ベルサイユのばらが上演されている大劇場はエスカレーターで一つ上に上がった階に入口があります。チケットの自動発券機やグッズ売り場などもこの階にあります。オペラグラスの貸し出しは地上階の入り口向かって左側に案内がありました(借りていないのでシステムはわかりませんが)

キャストボードやフォトスポットもロビー階にあります。

私は一番安いA席のチケットを購入したので、ロビー階からさらに2つ上の3階席へ上がります。

ちなみにチケット代金と座席位置は↓のような感じです。1ウォン=0.1円ちょっとなので、価格帯としては帝劇系のミュージカルとほぼ同じようなイメージでしょうか。

VIP席 170,000 ウォン(1階席センター&2階席前方)
R席 140,000 ウォン (1階席サイド&2階席中程)
S席 110,000 ウォン (2階席後方&3階席前方)
A席 80,000 ウォン (3階席後方)
日曜日の昼公演を観劇したのですが、3階席は前方のS席はほぼ空いていて、A席はセンターブロック中心に半分位埋まっていた感じでした。

客層としては日本の劇場よりも老若男女幅広い人たちが見に来ているなという印象を受けました。ベルサイユのばらという演目上、女性の観客が圧倒的かなと思っていましたが、日曜日の昼間ということもあって、カップルや年配のご夫婦、家族連れなどが多く見られました。

韓国版「ベルサイユのばら」の上演時間は1幕60分休憩20分2幕70分で計150分でした。

韓国ミュージカル版「ベルサイユのばら」チケットの買い方

私のチケットの購入方法が最適解かどうかは全くわからないのですが、一例として参考になればと思い、今回ベルサイユのばらのチケットを現地で購入した方法を書いておきます。

今回韓国滞在中に少し時間が出来たので、急遽何かミュージカルを観よう!と前日に思い立って演目を探し始めました。

私が使ったのはインターパークのグローバル版サイトです。
https://www.globalinterpark.com/ja

ここのミュージカルカテゴリから気になる演目を選んで、翌日の公演のチケットの空きがあるかを見ていきました。
「フランケンシュタイン」や「ハデスタウン」も気になったのですが、公演日時を選択すると予約可能な座席が0席と出たので、売切れということなんだろうなと。

観たい公演の公演日時を選んで「本人認証(Verified Member Only)」をクリックすると、会員登録画面に進みます。登録するのはアドレスとパスワード、名前位で、本人認証としてパスポートを使いました。

登録が済んだら公演日時と座席を選んで、クレジットカードで決済。チケット代金の10%が手数料として上乗せされます。

支払いが完了したら予約番号が発行されるので、当日は会場2階にある自動発券機にその予約番号を入力したらチケットが発券されました。

(自動発券機のタッチパネルの反応が悪い機械があって、なかなか予約番号の最初のアルファベットが入力できなかったりしたのですが、並び直して機械を変えたら解決しました。地元の方は予約番号ではなくQRコードで発券している人が多かった気がします)

自動発券機の場合、予約番号の入力だけで発券できましたが、上手く動かない場合は有人のカウンターで問い合わせることになると思うので、予約時に案内がある通り、決済に使ったクレジットカードと本人確認書類は持って行った方が良いと思います。