「マジシャンの憂鬱」が2025年花組博多座公演で上演されます。この作品は2007年月組の大劇場公演として瀬奈じゅん、彩乃かなみ主演で初演され、今回が初めての再演になります。
この2-3年で「BLUFF」「愛するには短すぎる」「二人だけの戦場」「ブラック・ジャック」「ブエノス・アイレスの風」「バロンの末裔」と、正塚晴彦作品の再演が続いていますが、「マジシャンの憂鬱」は正塚作品の中でも軽めのタッチでオシャレな作品という印象です。
花組での再演にあたり「マジシャンの憂鬱」のあらすじや登場人物、月組初演時のキャストや感想などをまとめておきます。
「マジシャンの憂鬱」あらすじと感想
舞台は20世紀半ばのヨーロッパのとある王国。シャンドール(瀬奈じゅん/永久輝せあ)は上流階級で人気のマジシャン。ある日マジックの流れで発した予言が偶然当たったことで、透視能力を持つ超能力マジシャンと評判になり、様々な事件解決の依頼が舞い込むようになる。
そんなシャンドールの前にヴェロニカ(彩乃かなみ/星空美咲)という女性が現れ、皇太子ボルディジャールの元へ連れていく。シャンドールの超能力の噂は王室にも届いていて、皇太子から極秘の依頼を受けることに。
その依頼とは、3年前に事故死したとされる皇太子妃マレークの死の真相を明らかにすること。皇太子は、皇太子妃は事故ではなく誰かに殺されたのではないかと疑っていた。ヴェロニカは皇太子妃のボディガードだった女性で、真相解明のためシャンドールと行動を共にすることに。
自らの透視能力が嘘だとも言い出せなくなったシャンドールは、居候の仲間たちの力も借り、事故死が真実だと結論付けて終わりにしようと計画する。しかし事故現場を訪れたシャンドールたちは何者かに襲われ、皇太子妃の死の真相は思わぬ展開を見せる……。
*試聴部分の台詞にネタバレが含まれるのでご注意ください(9,10曲目)
「マジシャンの憂鬱」は「皇太子妃の事故死の真相解明」が主軸になりますが、ミステリーとしての伏線などは殆どなく、事件自体の解決は小粒というかクライマックスではない、という構造の作品です。これは正塚作品の特徴のひとつだと思っていて、「バロンの末裔」や「デビュタント」などもそのような構造かなと思います。
それよりも登場人物たちのキャラクターや掛け合いの面白さなどで魅せる作品という印象で、特に最後のシャンドールとヴェロニカの場面は正塚作品らしい名シーンという感じでお気に入りです。
「マジシャンの憂鬱」はコメディタッチな部分もあり、終始楽しく見られる作品で、魅力的なナンバーも多くあります。
またプロローグでは黒燕尾での総踊りや男役のシルクハット&マント姿などもあり、ヒロインのヴェロニカをはじめ娘役のタイトなシルエットのドレス姿も楽しめます。
初演では、1幕が日本物のショーで2幕目がこの作品だったため、お芝居のラストシーンから幕が下りることなくそのままロケットに繋がっていたのですが、花組の再演では最後のシーンは少し変更が入るのだろうなと思います。
「マジシャンの憂鬱」の主な登場人物とキャスト
シャンドール
2025年花組 永久輝せあ
クロースアップマジック(テーブルマジック)を専門とするマジシャン。
マジックの流れで発した予言が偶然当たったことで、透視能力を持つと評判になり、皇太子から事件の真相解明の依頼を受けて奔走することになる。
シャンドールは上流階級で人気のマジシャンとして成功している人物で、スマートで観察眼にも優れたキャラクターです。
その一方で、家に5人もの自由人たちを居候させていたり、皇太子の勢いに押されて無茶な依頼を引き受けてしまったりと、押しに弱いというかお人好しな面もあります。
改めて初演の映像を見返すと、シャンドールというのは、なかなか難易度の高い役だなと感じました。主役でありながら、シャンドールの生い立ちや何を思って生きてきたかなど、彼の背景については劇中全く描写がなく、ただ成功したマジシャンということしか示されません。
シャンドールは決して正義のヒーロー然としているわけではないんですが、最終的には器が大きくてカッコいい。男役として完成されたところから、さらに抜け感のようなものが必要になる役だと思うので、トップスターになった永久輝せあが今回どのようなシャンドールを作ってくるのか、とても楽しみです。
ヴェロニカ
2007年月組 彩乃かなみ 新人公演:夢咲ねね
2025年花組 星空美咲
皇太子妃の侍女兼ボディガード。皇太子妃の結婚時に共にイギリスからやってきた。
皇太子妃の事故死の真相を調べており、シャンドールと共に行動することになる。
ヴェロニカは皇太子妃のボディガードでありながら彼女を守れなかったこと、皇太子妃の事故で双子の妹を亡くしたことに今も深く心を痛めています。
真面目でクールな仕事人の一方で、ダンスが苦手だったり恋に不器用なところが可愛らしく見えてくるキャラクターだなと思います。
ボルディジャール
2007年月組 霧矢大夢 新人公演:明日海りお
2025年花組
ヨーロッパのとある国の皇太子。王制から民主制へと国の改革を目指す志溢れる人物。
3年前の妻マレークの事故死の真相を疑い、シャンドールに透視を依頼する。
ボルディジャールは歌詞で「殿下はパッショネート」と歌われるようにエネルギッシュな熱い人物で、それ故に笑いが起こる場面などもあっておもしろいキャラクターです。
マレーク
2007年月組 城咲あい 新人公演:白華れみ
2025年花組
ボルディジャールの妻で皇太子妃。3年前に事故死したとされている。
マレークは設定上出番が限られ、後半にしか登場しない役なのですが、物語のカギを握る存在です。
シャンドールの仲間たち
シャンドールの屋敷に居候している自由人5人組。シャンドールの透視術を成立させるための調査なども行う。
居候たちは皆職業もバラバラで個性あふれるキャラクターです。シャンドールを囲んでのナンバーもあって、この作品の盛り上げ役ともいえる存在です。
5人の中でも特にジグモンドとラースロが中心メンバーという感じで、皇太子妃の事件の調査にも同行するので出番も多めです。
ジグモンド
2007年月組 大空祐飛 新人公演:光月るう
2025年花組
シャンドール家の居候で自称・天才発明家
ラースロ
2007年月組 嘉月絵理 新人公演:麻月れんか
2025年花組
シャンドール家の居候で探偵
ギゼラ
2007年月組 出雲綾 新人公演:夏月都
2025年花組
シャンドール家の居候で占い師
初演では歌手の出雲綾さんが演じていたこともあり、プロローグで歌のソロパートもありました
ヤーノシュ
2007年月組 遼河はるひ 新人公演:流輝 一斗
2025年花組
シャンドール家の居候で俳優志望。口癖は「刺激的だ」
レオー
2007年月組 龍真咲 新人公演:彩星りおん
2025年花組
シャンドール家の居候で詩人。5人の中では弟キャラ。
皇太子妃の事故死に関わる人物
アデルハイド
2007年月組 矢代鴻 新人公演:美夢ひまり
2025年花組
皇太子妃が埋葬された墓地の墓守。
「墓守の唄」でソロの歌があります。
シュトルムフェルド
2007年月組 未沙のえる 新人公演:綾月せり
2025年花組
皇太子妃が埋葬された墓地の墓守。
シャラモン
2007年月組 桐生園加 新人公演:彩央寿音
2025年花組
皇太子妃が埋葬された墓地がある教区の司祭。
王室関係者たち
シャーロット
2007年月組 憧花ゆりの 新人公演:琴音和葉
2025年花組
ヴェロニカの同僚で、同じく皇太子妃の元侍女兼ボディガード。特殊な構えの武術を使う。
エヴァ
2007年月組 夢咲ねね 新人公演:蘭乃はな
2025年花組
ヴェロニカの同僚で、同じく皇太子妃の元侍女兼ボディガード。特殊な構えの武術を使う。
スカローシ
2007年月組 星条海斗
2025年花組
皇太子の付き人。
シャンドールが襲われて熱くなる皇太子との攻防が見どころです!
ネクチュイ
2007年月組 明日海りお
2025年花組
皇太子の付き人
「マジシャンの憂鬱」その他の登場人物
イローナ
2007年月組 瀧川末子 新人公演:萌花ゆりあ
2025年花組
シャンドールのマジックを受ける上流階級の婦人。愛犬が行方不明になっている。
ロラーンド
2007年月組 越乃リュウ 新人公演:五十鈴ひかり
2025年花組
シャンドール家へ透視の依頼に来る男爵
コルネール
2007年月組 青樹泉 新人公演:宇月颯
2025年花組
アフリカで消息不明になっていた探検家
バルトーク大臣
2007年月組 北嶋麻実 新人公演:榎登也
2025年花組
財務大臣
アンドラージュ指令官
2007年月組 良基天音 新人公演:響れおな
2025年花組
近衛連隊司令官
新聞記者
2007年月組 矢代鴻 新人公演:麻華りんか
シャンドールの「奇跡のマジシャン」のナンバーで登場する新聞記者の一人。
初演では矢代鴻さんがアデルハイド役と二役で演じていましたが、新聞記者役でも歌のソロパートがあります。
花組公演「マジシャンの憂鬱」公演情報
ミュージカル
『マジシャンの憂鬱』
作・演出/正塚晴彦
レヴュー グロリア
『Jubilee(ジュビリー)』
作・演出/稲葉太地
公演期間:2025年3月8日(土)~3月30日(日)@博多座(福岡県)
出演者
花組
永久輝せあ、星空美咲 ほか