2025年8月、宝塚雪組御園座公演で「パリのアメリカ人」が上演されます。
この作品は1928年に発表されたガーシュインの交響曲から始まり、1951年のジーン・ケリー主演ミュージカル映画をベースに、2014年にパリでミュージカルとして初演。日本では2019年に劇団四季が上演しています。
私は以前2018年のロンドン公演を映像化したものを見ていたので、あのアメパリを宝塚でやるのか!と驚きでした。
ミュージカル「パリのアメリカ人」はアメリカの作曲家であるガーシュインの楽曲で綴られますが、ヨーロッパ的な雰囲気を持った抒情的な作品という印象で、台詞で語るよりもまず踊りで表現、というシーンが多かったなと。
ダンスの中でもかなりバレエ要素が強く、宝塚では再現が難しい男女ペアの振りなども多いので、宝塚での上演にあたりどのように調整がされるのかも興味深いです。
ミュージカル版「パリのアメリカ人」の登場人物や、ガーシュインの名曲を使ったセットリストについて、予習用にまとめておきたいと思います。
- 「パリのアメリカ人」あらすじと時代背景
- 「パリのアメリカ人」の特徴:悪人が出てこない芸術讃歌
- 「パリのアメリカ人」登場人物とキャスト
- 「パリのアメリカ人」セットリストとストーリー展開
- 「パリのアメリカ人」第1幕のセットリスト
- 「パリのアメリカ人」第2幕のセットリスト
- Entr’acte (アントラクト)
- Fidgety Feet (フィジェティ・フィート):ジェリー
- Who Cares? / For You, For Me, For Evermore:アンリ、マイロ~ジェリー、リズ
- But Not for Me (バット・ノット・フォー・ミー):アダム、マイロ
- I’ll Build a Stairway to Paradise (天国への階段):アンリ、アダム
- An American in Paris (パリのアメリカ人)
- They Can’t Take That Away from Me (誰にも奪えぬこの想い):ジェリー、アンリ、アダム
- Epilogue (エピローグ)
- 雪組公演「An American in Paris(パリのアメリカ人)」公演情報・期別出演者
「パリのアメリカ人」あらすじと時代背景
ミュージカル「パリのアメリカ人」の舞台は、1945年第二次世界大戦終戦直後のフランス・パリです。
4年以上に及ぶドイツ軍の占領からようやく解放されたものの、その傷跡がまだ強く残る時代のパリという描写が随所に差し込まれます。
時代としてはちょうど2024年花組公演「アルカンシェル」のラストと繋がっているような感じですね。
パリに駐在していたアメリカ人の軍人ジェリーは、終戦後もパリに留まり、画家としての新たな人生を模索しようとしていました。
ジェリーは、同じく元アメリカ軍人で作曲家志望のアダムと、裕福な資産家の息子ながら密かにショーマンを志すフランス人のアンリと知り合い、友情を育んでいきます。
そんな中、ジェリーは街角で出会って一目惚れしたダンサー志望のリズと再会し、猛アタックを開始。
実はリズはアンリと昔から家族ぐるみの付き合いで、長年リズに思いを寄せてきたアンリはリズにプロポーズ寸前。そしてバレエ団のオーディションでリズと知り合ったアダムも、リズを好きになってしまいます。
リズはジェリーに心惹かれるものの、大戦中にユダヤ人である自分を匿ってくれたアンリ一家への恩もあり、悩みます。
リズがオーディションに合格したバレエ団では、スポンサーであるアメリカ人実業家のマイロがジェリーを気に入り、彼の絵を新公演の舞台美術に使うことに。
新たな公演に向けて皆が動き出す中で、ジェリー、リズ、アダム、アンリ、マイロ5人の恋模様も絡み合っていきます。
「パリのアメリカ人」の特徴:悪人が出てこない芸術讃歌
この作品の特徴としては、悪役がおらず、皆がそれぞれ悩みつつも、人のことを思いやったりしている温かい登場人物たちだなと。
メインの男性3人のキャラクターも、社交的なジェリー、内気で少し理屈っぽいアンリ、皮肉屋のアダムとそれぞれ違っていて楽しいです。
そして男性3人と、リズ、マイロの女性2人が絡む恋物語という面と共に、登場人物全員が芸術を愛しその力を信じている人たちで、アートやエンターテインメントに向ける情熱も強く描かれています。
ちょうど花組「アルカンシェル」でも描かれていましたが、ドイツ軍の占領下ではジャズが禁止されるなど芸術にも厳しい統制がかけられていました。
そこから間もない終戦直後だからこその解放感や戸惑い、改めて芸術の素晴らしさを実感する描写などが随所に差し込まれていて、芸術讃歌が強く感じられる作品でもあるなと思います。
「パリのアメリカ人」登場人物とキャスト
ジェリー・マリガン
アメリカ人の軍人。画家としての新たな人生を始めようと、終戦後もパリに留まることを決める「パリのアメリカ人」
社交的な性格で、アダムやアンリはじめパリで暮らす人々とすぐに親しくなり、一目惚れしたリズにも積極的にアタックし続ける。
ジェリーは明るく外向的な陽のキャラクターで、戦時下の体験で心に傷を負っているリズをはじめとするパリの人たちを照らしていくような人物だなと思います。
2019年劇団四季 酒井大/松島勇気/吉岡慈夢
2025年雪組 朝美絢
リズ・ダッサン
ダンサーを目指しているが、今はデパートの香水売り場で働くフランス人女性。モンテカルロでバレエの教育を受け、母親も著名なダンサーだったが、ユダヤ人のため大戦中に両親と離れ、アンリ一家に匿われて生き延びた過去を持つ。
リズはジェリー、アンリ、アダムの3人から想いを寄せられるザ・ヒロインなのですが、自分の感情よりも「こうあるべき」というのを優先する真面目な女性だなという印象です。
2019年劇団四季 石橋杏実/近藤合歓
2025年雪組
アンリ・ボーレル
フランス人資産家の一人息子。両親には打ち明けられていないが、実はショーマンとしてエンターテインメントの世界で生きていくことを夢見ている。
昔から家族ぐるみの付き合いがあるリズのことを長年思い続けていて、プロポーズしようと考えているが、リズの自分への思いには自信がない。
アンリは裕福で恵まれた生い立ちながらも、内気でリズに対して強気に出れない、ジェリーとは対照的なキャラクターです。
2019年劇団四季 小林唯/加藤迪/山下啓太
2025年雪組
アダム・ホックバーグ
ジェリーと同じく元アメリカ軍人で、終戦後に芸術への夢を叶えるためにパリに留まることを決めた。作曲家を目指しているものの、目下バーやバレエ団でピアノを弾いて生計を立てている。軍人時代の後遺症で足が不自由。
アダムは世の中を少し斜めに見ているような皮肉屋なところがあり、リズに片想いするものの、ジェリーのようにストレートに行動できない不器用な面も持っています。
全編通して、時代背景などを観客に説明するストーリーテラーの役割もアダムが担っています。
2019年劇団四季 斎藤洋一郎/俵和也/神永東吾
2025年雪組
マイロ・ダヴェンポート
裕福なアメリカ人実業家。パリで、バレエの公演に出資したり、絵の展覧会を開くなど芸術に関わる活動をはじめようとしている。
ジェリーを気に入り、彼の絵を新しいバレエ公演の舞台美術に起用することにする。
マイロはサバサバとした姉御肌の女性で、個人的には登場人物の中で一番好きなキャラクターです。ロンドン版と変更がなければかなり大きな役で、諏訪さんの女役があるかな?と予想していたのですが出演者ではなかったので、配役が気になるところです。
2019年劇団四季 岡村美南/宮田愛/加藤あゆ美
2025年雪組
マダム・ボーレル
アンリの母親で、バレエ団の幹部のひとり。戦時中の苦労もあり、心配性で口数の多い人物として描かれています。
2019年劇団四季 秋本みな子/佐和由梨
2025年雪組
ムッシュ・ボーレル
アンリの父親。マダム・ボーレルとは対照的に寡黙な人物です。
2019年劇団四季 味方隆司/増田守人
2025年雪組
オルガ
バレエ団のバレエ教師。ロンドン版では年配で厳格な印象です。
2019年劇団四季 木村智秋/大岡紋
2025年雪組
ミスターZ
バレエ団の監督。
2019年劇団四季 金久烈/荒木啓佑
2025年雪組
「パリのアメリカ人」セットリストとストーリー展開
「パリのアメリカ人」は全編ガーシュインの曲で構成されています。
言葉は無く動きだけでストーリーや人物の感情を表現していくノンバーバルの要素が強い場面が多く、全体として余白を持たせた抒情的な雰囲気になっています。
なお、各曲の日本語表記は劇団四季のCDを参照しています。
「パリのアメリカ人」第1幕のセットリスト
Concerto in F (ピアノ協奏曲ヘ調)
第二次世界大戦が終結してパリが解放され、アメリカ軍人のジェリーが街角でリズに一目惚れし、アメリカに帰らずパリに残ることを決めるまでのストーリーが、この1曲の中でノンバーバルで表現されています。
I Got Rhythm (アイ・ガット・リズム):アンリ、アダム、ジェリー
ガーシュインの中でも有名な1曲。「パリのアメリカ人」の中では、ジェリーが偶然訪れたカフェでアダム、アンリと知り合った直後、アンリがアダムの伴奏で練習し始める曲としてナンバーが始まります。
曲が進むにつれ、カフェの人々も加わったにぎやかなダンスナンバーになり、3人の友情もこの1曲の中でどんどん深まっていくという楽しいシーンです。
Second Prelude (3つの前奏曲:第2番)
リズがバレエ団のオーディションで踊るシーンの曲。
このオーディションでジェリーはリズと再会し、アダムもリズに惹かれ、マイロとミスターZはリズをダンサーとして評価します。
I’ve Got Beginner’s Luck(アイヴ・ガット・ビギナーズ・ラック):ジェリー
ジェリーはリズが働くデパートへ押しかけ、リズに恋する気持ちを歌い踊る。
The Man I Love(私の彼氏):リズ
リズはアンリがプロポーズをしてきたら自分はどうするべきか悩む。
アンリのことは好きで感謝しているが、恋ではない。とリズが自分の理想の恋人の姿を思い浮かべながら歌うナンバー。
Liza (ライザ):ジェリー
夜セーヌ川の川岸で再会するジェリーとリズ。ジェリーはリズのことを英語読みで「ライザ」と呼び、新しい自分になろうと歌い、二人は踊りだす。
‘S Wonderful(ス・ワンダフル):ジェリー、アンリ、アダム
こちらもガーシュインの代表的な楽曲。
「パリのアメリカ人」では、ジェリー、アンリ、アダムの3人が、それぞれリズを思って幸せな気持ちを歌うナンバーになっています。
Shall We Dance? (シャル・ウィ・ダンス?):マイロ
作品を見せにマイロを訪ねたジェリーに対し、マイロは人生を楽しもうと誘う。
このナンバーはマイロのアメリカ人らしいカラッとした気質が全開で、リズと対照的な女性キャラクターということがよくわかるナンバーになっています。
Second Rhapsody / Cuban Overture (セカンド・ラプソディ/キューバ序曲)
セーヌ川の畔で逢瀬を重ねるジェリーとリズ
バレエ団で新しい公演に向けてレッスンに励むリズ
仕事仲間として舞台美術に試行錯誤しながら、仲を深めていくジェリーとマイロ
稽古場で落ち込むリズを励まそうとするアダム
仮面舞踏会で鉢合わせてしまうジェリーとマイロ、リズとアンリの2組のカップル
などが、1幕頭と同様、ノンバーバルで表現されていく長尺のシーンになります。
「パリのアメリカ人」第2幕のセットリスト
Entr’acte (アントラクト)
2幕の幕開け。
Fidgety Feet (フィジェティ・フィート):ジェリー
「落ち着きのない足」という意味の曲。
バレエ団関係者たちのパーティーでの、ジェリーを中心とするダンスナンバーになっています。
Who Cares? / For You, For Me, For Evermore:アンリ、マイロ~ジェリー、リズ
アンリがリズに、マイロがジェリーに向けて思いを歌う2組のカップルのナンバー
But Not for Me (バット・ノット・フォー・ミー):アダム、マイロ
恋に破れたアダム、マイロがそれぞれ歌うナンバー
I’ll Build a Stairway to Paradise (天国への階段):アンリ、アダム
アンリは両親に隠れてナイトクラブでステージに立つ。伴奏するアダム。
ナンバーが進むと共に、舞台はアンリが空想するラジオシティ(ニューヨークの大劇場)に移り、アンリとアダムはダンサーを従えて華やかに歌い踊る。
ここのアンリとアダムは、ロンドン版では黒燕尾にシルクハット&ステッキというビジュアルで、羽扇やラインダンスの振りも登場するなど宝塚にもぴったりのショーナンバーです。
特にアダムは足が不自由という設定上、他のダンスナンバーには加わらないことが多いので、アダムのダンスシーンが見られる貴重なナンバーでもあります。
An American in Paris (パリのアメリカ人)
リズの晴れ舞台である新作バレエが開幕する
ここではタイトルにもなっているガーシュインの交響曲「パリのアメリカ人」にのせて、劇中劇としてバレエ作品が演じられるという構造になっています。
They Can’t Take That Away from Me (誰にも奪えぬこの想い):ジェリー、アンリ、アダム
ジェリー、アンリ、アダムがそれぞれ自分の見つけた想いについて歌う
Epilogue (エピローグ)
セーヌの川岸でのジェリーとリズのデュエットダンス
雪組公演「An American in Paris(パリのアメリカ人)」公演情報・期別出演者
ミュージカル
『An American in Paris(パリのアメリカ人)』
作詞・作曲 ジョージ・ガーシュイン、アイラ・ガーシュイン
脚本 クレイグ・ルーカス
潤色・上演台本/石田昌也
演出・訳詞/指田珠子
公演期間:
2025年8月14日(木)〜9月4日(木)@御園座 (愛知県)
出演者:
雪組
透真かずき(91期)
朝美絢、天月翼、瀬央ゆりあ(95期)
妃華ゆきの(96期)
縣千(101期)
愛羽あやね、紗蘭令愛(103期)
蒼波黎也、麻花すわん、風雅奏(104期)
音彩唯、琴峰紗あら、愛空みなみ、月瀬陽(105期)
霧乃あさと、彩名美希(106期)
絢月晴斗、瑞季せれな、妃奈環、瞳月りく、乙瀬千晴(107期)
苑利香輝、清羽美伶、榊歩(108期)
音綺みあ、祈菜さあや、星姫あやか(109期)